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「時の層 — 女川の記憶を辿る2024

 「私にとって『故郷』とは何か?」大津波が故郷を呑み込んだ2011年以降、この問いが私の中に浮かび上がりました。私は写真館の三代目として、女川の移り変わる風景を上空から眺め、過去の記憶と重ね合わせてきました。1960年チリ津波の記録、再建されつつある家々、かつての女川湾、仮設住宅の前で撮られた家族写真、祖父が撮影した婚礼写真――これらすべてが故郷の断片です。
 

 昔の地図や町並みと見比べる中で、町の「変化」と「失われたもの」の重みを感じずにはいられません。新しい家に佇む人々、津波で損傷したスナップ写真、そして先祖の写真を手に取るとき、過去と現在が繋がり、記憶が蘇ります。この『変化』と『喪失』の瞬間に刻まれたものを見つめています。不安と希望が交錯する中で写真を通して、女川の物語が静かに未来へと紡がれることを願っています。

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2024 .12 「SKY Ⅶ  」Sony Imageng Gallery, Tokyo, Japan
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01

宮ヶ崎 2018

609x726mm

アーカイバルピグメントプリント/Hahnemühle Photo Rag Baryta

Mavic Pro 

山の上に造成された新しい住宅地。急な坂道を登った先に、シンメトリーに並ぶ同じ形の住宅が広がる。ドローン撮影では、SF映画やアメリカの郊外住宅地を思わせる人工的な景観が確認できる。ここは、震災後の現在の女川であり、再建された未来の女川でもある。

02

女川の海水で制作したソルトプリント1  2024

サイズ 105x140mm / 和紙

石巻圏ふるさと映像館より 撮影:女川町教育委員会

Webに残っている女川の古いアーカイブ写真。データ原寸大でプリントを作成し、大きめなブックマットに納めた。

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03

女川の海水で制作したソルトプリント2 2024

120x137mm / 和紙

石巻圏ふるさと映像館より 撮影:女川町教育委員会

Webに残っている女川の古いアーカイブ写真。データ原寸大でプリントを作成し、大きめなブックマットに納めた。

04

New Houses 2015

400x500mm

アーカイバルピグメントプリント/GEKKOシルバーラベル プラス

EBONY 4x5, Kodak PORTRA 400  

 3ヶ月ぶりに帰った故郷は、いろいろと変化していて、私の家があった場所は5mも下に消えてしまって、工事のための立入禁止区域になっていた。なんとなく悲しかった。吹っ切れたつもりだったけど、本当に消えてなくなる寂しさがひしひしとあって、サウダージみたいな気分になった。

 その上には新しい道路が作られていて、未来へ伸びていく希望の道にも見えた。午後には新しい住宅地と、工事途中の道路を撮影した。新しい家の庭先で老夫婦が手を振ってくれた。幸せそうだった。

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05

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昭和30年代後半の女川港(左)と2016年12月の女川港(右)

550x172mm、フォトアクリル

石巻圏ふるさと映像館 撮影:女川町教育委員会

06

祖父・佐々木虎猪が撮影した婚礼スタジオ写真(複製)170x280 mm

アーカイバルピグメントプリント/GEKKOシルバーラベル プラス

祖父が撮った婚礼写真を初めて目にした時、胸が熱くなるような感動を覚えた。その写真は古びた台紙に収められ、少し赤みを帯びた色合いに変わっていた。表紙にはカビが生え、長い年月の経過を物語っていた。それを見せてくれたのは、かつて祖父が撮影したお客様だった。その瞬間、写真はただの記録ではなく、時を超えて人々の心に寄り添い続ける存在だと深く実感した。

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07

父・佐々木厚が撮影した婚礼スナップ写真(複製)

100x150mm / 100x150mm 

アーカイバルピグメントプリント/GEKKOシルバーラベル プラス

AIによる自動カラー化

アルバムの隣のページをめくると、そこにはスナップ写真が収められていた。それは結婚式当日、写真スタジオから会場へ向かう途中で撮影された一枚と思われた。白無垢を纏った花嫁が、1970年代の女川の街並みを歩く姿は印象的で、その光景に思わず目を奪われた。そして、別の写真には写真館らしき建物が映り込んでいて、それが若き日の父の撮影によるものだとすぐに分かった。シャッターを切る父の姿が思い浮かぶような一枚だった。その写真には、父が歩み始めた頃の記録と、祖父の写真館の歴史が静かに重なっているように感じられた。

08

ダイヤモンドヘッド 2007

撮影:佐々木厚

160x240mm、シルバーゼラチンプリントを原本としたアーカイバルピグメントプリント

写真館と町の人々との記憶は、スタジオ写真だけじゃない。2007年に建て替えたBARダイヤモンドヘッド。2011年の津波で跡形もなくなってしまったけど、撮影時の記憶はこうして残された。

「家のために関わってくれた大工さん、建築家、職人さんたちをこの家族の記憶として残してあげたい」と父は語っていた

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09

語り継ぐもの 2018 

508x609mm 

アーカイバルピグメントプリント/Hahnemühle Photo Rag Baryta

EBONY 4x5,
ソトコトオンライン2019.08.25にエッセイが掲載されていますのでご一読ください

https://sotokoto-online.jp/local/439

10

母の帰りを待つ女性 2018

406x508mm

アーカイバルピグメントプリント/GEKKOシルバーラベル プラス

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11

自転車の少女

144x202mm

住民からお借りした津波でダメージを受けたスナップ写真(複製)

12

松川夫妻 2017

406x508mm

アーカイバルピグメントプリント/GEKKOシルバーラベル プラス

EBONY 4x5

新築の家の前で撮影

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